牙龍−元姫−





「寿々それを取りに行ってたの?」




庵が雑誌を見ながら聞く。きっとジュースを顔に被ったときに落としたんだと思う。



庵は寿々ちゃんが下に降りていた原因ともなる雑誌を指差した。



あれ?じゃあそれが――‥






「響子ちゃん!これこれ!この雑誌だよ!」





テーブルにバンッと叩きつけ雑にページを捲ると、あるページで止めた。
私はそのページを食いつくように見る。



そこには…





「あ!早苗の名前だっ!」

「ホラね!嘘じゃなかったでしょ!?」

「わあ。すごーい」





私と寿々ちゃんはキャッキャッとそのページを見て騒ぐ。周りは気にせず私達だけの世界。





「何だこれ?」





左隣から遼が雑誌を覗きこむ。



頬にサラッと金髪が触れ、微かに肩を揺らしたけど誰にも気づかれなかった。



よく見れば戒吏も右隣から覗いている。美形の2人に近くで挟まれている私の心臓(ハート)は爆発寸前。だけど皆雑誌に夢中だから誰も気づかない。



そんな私を無視するかのように話は進んでいた。





「へえ〜この"猫田のの"は寿々と響子の友達なんだ?僕は知らないけど」

「俺ァ猫田なら知ってるぜ?中々イカしたホラーセンスしてやがる」




庵は知らないみたいだけど、遼は知っていたらしく雑誌を見ながら言う。
でも私は遼の言葉が引っ掛かった。




「…ホラー?」

「あれ?言わなかった?猫田が書いてるのはホラー漫画だよ?」

「(…嘘)」





私は口を開けたまま固まった。
< 614 / 776 >

この作品をシェア

pagetop