獣は禁断の果実を蝕むのか。
タバコの灰だ。
漬物とデザートの大福は生ごみの匂い。
専務は、私にこれを食べろって言うの?
ここまで露骨にイジメるなんて。
秘書も居つかないわけだ。
徹底的に嫌われたみたい。
でも、クビにならないだけいいか。
早く任務を終わらせて帰ろう。
不思議なくらい気持ちが落ち込む。
あの冷酷の獣の専務の優しさが嬉しかっただけで。
現実を見たら、優しさでも何でもなくて。
早くここから出てって欲しいだけって実感した。
お弁当にフタをすると、近くにあったメモ用紙に
『ご迷惑をおかけしました。』
その一言だけを書くと、お弁当を持って部屋から出て行った。