獣は禁断の果実を蝕むのか。

タバコの灰だ。


漬物とデザートの大福は生ごみの匂い。


専務は、私にこれを食べろって言うの?


ここまで露骨にイジメるなんて。


秘書も居つかないわけだ。


徹底的に嫌われたみたい。


でも、クビにならないだけいいか。


早く任務を終わらせて帰ろう。


不思議なくらい気持ちが落ち込む。


あの冷酷の獣の専務の優しさが嬉しかっただけで。


現実を見たら、優しさでも何でもなくて。


早くここから出てって欲しいだけって実感した。


お弁当にフタをすると、近くにあったメモ用紙に


『ご迷惑をおかけしました。』


その一言だけを書くと、お弁当を持って部屋から出て行った。

< 105 / 387 >

この作品をシェア

pagetop