獣は禁断の果実を蝕むのか。
覚悟をしながら、恐る恐る室長室のドアを閉めた。
パタンとゆっくりドアが閉まると、ピタッと室長の足が止まって。
クルリと私の方に振り返った。
「す…すみませんでした。」
怒られる前に。
深く頭を下げて謝った。
ここでクビになるわけにいかないもん。
借金なんか返せる当てもない。
まして、犯罪者になんかなりたくない。
どうにかして、クビだけはまぬがれたい。
「えっ?何を言っているの?」
驚いた口調の室長に、こっちが逆に驚いてしまって。
深く下げた頭を勢いよく上げた。