ふたつの背中を抱きしめた


黄昏の街に響いたその鐘を合図に、私と綜司さんの一日が終わった。

「また連絡して。
て言うか、こっちから連絡してもいいかな?」

社交辞令かも知れないけど、
別れ際にそう言ってくれた綜司さんの言葉が嬉しくて
私は思わず何度も頷いてしまった。

そんな私にクスリと笑いかけて綜司さんは手を振って帰って行った。



地元に戻ってからも私はしばらく綜司さんのコトで頭がいっぱいだった。

あの泣きじゃくっていた幼なじみが、あんなに素敵な男性になっていた事に

私の胸は甘くときめいていた。


情けないコトに18年間恋愛とは無縁だった私に
ようやく人並みのトキメキがやってきたのだと
自分は綜司さんに恋をしてるのだと

そう自覚した私は嬉しさと気恥ずかしさで
枕を抱き締めながら自室のベッドでジタバタと転がった。


そんな浮かれポンチな私の元に綜司さんから「次、いつ会える?」と
とても社交辞令とは思えぬメールが届き
私は天にも昇る気持ちで色ボケを加速させた。


そうして
私達は3月の最終日に二度目の再会を果たした。



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