ふたつの背中を抱きしめた
夕暮れになっても私達のお喋りは尽きる事がなく
2杯目の紅茶もそろそろ空になろうかと云う頃。
「児童指導員?」
「うん、私も将来はお祖母ちゃんみたいに養護院で働きたくて。」
話題は私の進学先の話に及んでいた。
私の祖母は昔、児童養護施設で院長をやっていて沢山の子供の面倒を見てきた。
孤独でどうしたらいいか分からない瞳をした子供達を
お祖母ちゃんはその心と体を全て費やし笑顔に変えてきた。
『私はただ、子供に笑っていて欲しいだけなのよ。』
お祖母ちゃんは口癖のようによくそう言っていた。
そして、慈母のようなその博愛精神は私の人生にも大きな影響を与えた。
「私ね、子供が泣いてる顔を見るととても辛くなるの。
時には泣くコトが必要な時もあるけど。
でも、そうじゃない涙なら私が拭ってあげたい。
抱き締めて、頭を撫でて、大丈夫だよって安心させてあげたい。
その方法を学ぶために私は大学へ行くんだ。」
思わず熱く語ってしまった私を笑う事もなく
綜司さんは真剣な表情で聞いてくれて
「いいね、すごく真陽らしいと思うよ。」
と言ってくれた。
綜司さんが空になったティーカップをミニテーブルに置いたと同時に
17時を告げる鐘が街のスピーカーから流れだした。