ふたつの背中を抱きしめた



「…あれ…おかしいな…」

震える指先は細かいボタンを掴めず、上手く掛けられない。


もどかしさに、何故だか涙が込み上げてくる。


無言でひとり四苦八苦していると


柊くんが、背を向けていた私の前に回り込んでしゃがみこんだ。


そして、じっと私の顔を見つめると
手を伸ばして私の頭をぎこちなく撫でた。


「…柊くん…?」

「ゴメンな。」

「え…?」

「頭、痛かっただろ?ちゃんと布団敷けば良かった。」

「……」

「髪も、絡まっちゃってる。」


そう言った柊くんの手がたどたどしく、
でも、優しく
まるで壊れ物を扱うようにそっと、私の髪を梳いた。


なんて、

不器用な優しさなんだろう。


ぎこちなくて
不器用で
誰にも分かってもらえない。


でも

誰よりも、優しい子。



柊くんに髪を梳かれながら

私は、泣いた。


その手の温かさが辛すぎて、顔を覆って泣いた。



柊くんは静かに私の髪を撫でながら小さな声で聞いた。


「…後悔、してる…?」



「…してない…。」


私は柊くんの優しい手を受け入れながら
そう、伝えた。



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