ふたつの背中を抱きしめた



スタッフもボランティアもみんな、腫れ物を扱うようによそよそしい程この件には触れなかった。


ただ2人を除いて。


「だから言ったでしょ。貴女は柊くんを甘やかし過ぎだって。」

そう言って私を叱った矢口さんのお説教に、私はホッとした。

矢口さんのその裏表の無い厳しさにも安堵したが

私は誰かに叱って欲しかったのかもしれない。
責めて欲しかったのかもしれない。

柊くんの罰を少しでも請け負うために。


けれど、同じく私を責めたリエさんの言葉に、私は安堵を覚えるコトはなかった。


「婚約者さんにどんな顔向けするの?」


リエさんのその言葉は私の罪の核心を的確に突いてきた。

「柊くんだけが悪いワケじゃないよね。そんな状況を許した真陽ちゃんに責任は無いワケ?それって何気に婚約者さんのコト裏切ってるよね。」

私はリエさんの言葉に返す句も無かった。

あまりにもそれは的確すぎて。

何を返してもそれは言い訳だ。

「真陽ちゃんて真面目そうな顔して軽薄だよね。」


軽蔑を込めた目で私を見て、リエさんはそう言った。


リエさんが柊くんを好きだと私が気付いていたコトを、リエさんは薄々分かっていたと思う。

だから余計に許せないんだろう。


リエさんにとっては横恋慕もいいとこだ。

しかも、婚約者もいる女が。


もうきっとリエさんとは友達に戻れない気がする。


私の心でまた1つ、何かが壊れていく。



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