ふたつの背中を抱きしめた



「…真陽ちゃん、真陽ちゃん。」

園長室から出てきた私を呼び止めたのは加古さんだった。


「加古さん…まだ残ってたんですか?」

「貴女と話しするまで帰れないわよ。」

そう言って加古さんは困った顔をした。

「すみません、迷惑かけちゃって…」

「貴女が謝るコトじゃないでしょ。それより、マルちゃん…口止めしたんだけどやっぱり無理で。もう正規スタッフはみんな知ってるわ。ボランティアさんも今日来てる人は知っちゃった感じよ。」

「…そう…ですか」

その、柊くんをますます追い詰めるであろう報告は、私の心を強烈に重くする。

「ごめんなさいね。気を付けてたんだけど、マルちゃん帰ってからその話しかしないんだもの。」

「いえ、加古さんには感謝してます。マルちゃんも悪くありませんから。」

「まあ…悪いのは悪戯が過ぎた柊くんだけどね。」

加古さんの言葉がズシリと響く。

「結局、柊くんどうなるのかしら。流石に今日は来れてないけど。」

「…1週間ほどここには出入り禁止で、後は園長の元でのみ参加出来るそうです。」

「あらそう。まあ若気の至りってコトで大目に見てもらえたのかしらね。
でも真陽ちゃんからしたら軽すぎる罰じゃない?婚約者もいる身でそんなコトされたのに。」

加古さんの言葉に私は首を横に振った。

「…私も、柊くんと仲良くなりすぎました。男の子相手に隙があったって反省してます。」

「真陽ちゃんは責任感が強いわねぇ。」

加古さんはそう言って苦笑いをしながら溜め息をついた。

私のせいですっかり帰りの遅くなった加古さんにお礼を言うと
「元気出してね」と私を励まして加古さんは帰っていった。



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