ふたつの背中を抱きしめた
7章 約束・束縛・約束

1.夏の夜にキミのこと




すっかり陽の沈んだ住宅街のアパート。

もう迷う事は無い、ここへ来るのは3度目。


シルバー号を建物に寄せて置き、外階段を登る。


1番奥のドアで止まり、チャイムを押そうとした時、勢いよくドアが開いた。


「わ、ビックリした!」

「あ、ごめん!足音聞こえたから…」


2人でしばらく驚いたような顔を見合わせ

そして

柊くんが私を抱きしめた。


私達は唇を重ねながら部屋へ入り後ろ手でドアを閉めた。


唇を離した後、柊くんがジッと私の瞳を見ながら言う。


「…やっと来た…。」


その台詞に私の全身がキュッと疼く。

今度は私から唇を重ね、愛しさを籠めてキスをした。


柊くんは嬉しそうにそれを受けとめ、そして言った。


「…俺たち、怒られるな。」

「…神様に…?」

「園長に。」

「…そうだね。」




2人で、罪に堕ちよう。


どこまでも。
どこまでも。



そして一緒に怒られよう。


もう償えない沢山の裏切りを。




重ね合った手から伝わる熱から

そんな想いも伝わるようで

私は柊くんの手を硬く硬く握っていた。



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