ふたつの背中を抱きしめた


「ウソ!?いいの!?本当に!?」

柊くんの喜びようは私の想像以上だった。


「遠い所へ行こう。誰にも会わないような遠い所。待ち合わせも無しだよ。現地集合、現地解散。」

「いい!いい!全然構わない!」

私が穏やかに言った提案に、柊くんは勢い良く首を縦に振った。

「本当に?本当にいいの、真陽?」

まだ半信半疑で聞く柊くんに、私はにっこり笑って頷いた。

「やったぁ!!真陽大好き!!」

柊くんはそう叫ぶと、座っていた私に抱き付いて…いや、飛び付いてきた。

勢い良く飛び付いてきた柊くんの身体を支え切れるハズが無く、私はそのまま後ろにひっくり返った。

「真陽、大好きー!」

「重いっ!重いってば柊くん!!」

犬のように頬擦りをしてくる柊くんの全体重をのせた身体を、私は一生懸命手で押し退けながら言った。


「俺、今まで生きてきてこんなにワクワクするの初めてだよ。」

ギュウッと目を瞑って、幸せを噛みしめるように言った柊くんの笑顔を

私はきっと、一生忘れない。



神様。

この穢れのない子供のような笑顔は罪でしょうか。

この笑顔を守りたいと思った事は過ちなんでしょうか。


ねぇ、神様。




< 165 / 324 >

この作品をシェア

pagetop