ふたつの背中を抱きしめた



約束の日までを、柊くんはおとなしく過ごした。

いつもみたいに私に会いたいと駄々を捏ねるコトも無く。

まるでご褒美を貰えるように頑張ってる子供みたいに。



そんな柊くんの知らないところで、

私は彼の健気な気持ちを踏みにじるような日々を過ごしていた。



8月に入ってますます熱を帯びる夜に

私は毎晩のように綜司さんに抱かれていた。


柊くんと交わした約束は思っていた以上に私の罪悪感と背徳心を煽った。


それから目を逸らす為に快楽に溺れたかったのかも知れない。


その一方で、自分の気持ちを確かめたかったのかも知れない。


私が今、1番愛してるのは誰かを。



どんどん柊くんに堕ちていくこの心が一体誰のものなのかを。



けれども

綜司さんの手に溺れれば溺れるほど

私は答えが解らなくなる。



「真陽...、真陽...っ」


切なげな綜司さんの声が

優しい指先が

儚いほど美しい月明かりの下の顔が


私の中の綜司さんへの愛を確信させる。



そして熱く昂る熱と同時に

心の奥から込み上げる柊くんへの罪悪感を

私は確かに感じていた。




どうして私は1人しかいないのに



私の心は2つなんだろう。



どうして私は1人の女なのに



2人の男性を愛してるんだろう。




うだるような夏の夜は

私にその答えを教えてくれない。



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