ふたつの背中を抱きしめた



手を離すなら早い方がいい。

時が過ぎれば過ぎるほど傷は深くなるのだから。


けれど綜司さんの顔を見るとなかなかその勇気が出ない。

この幸せそうな笑顔を悲しみに変えるのかと思うと躊躇いがどんどん深くなる。



ココロの振り子を大きく揺らしたまま、無情にも時間は流れていく。



そんな私の気持ちを知ってか知らずか、柊くんは以前より私に執着するようになり本音を抑えながらも独占欲を見せるようになってきた。


「電話は無理でもさ、寝る前にはメール欲しい。おやすみって送ってよ。」

「なんか真陽とお揃いのモノ欲しいな。キーホルダーとかペンとか。一緒に買いに行けたらいいのにな。」

「…キスマーク…付けちゃダメ、だよな…?」

その言葉のどれもがもどかしい独占欲に溢れていて。

最近ではいつも別れ際に「帰したくない。」と駄々をこねて私を困らせた。



躊躇う。

なのに、焦れる。


そんな自分で自分を追い詰めるような日々を過ごしていたからか。

カレンダーが9月に変わってすぐの日に

私はまた過呼吸の発作を起こした。



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