ふたつの背中を抱きしめた



「多分、俺もうすぐ誕生日なんだ。」


ある日の夜、私の作ったクリームシチューを美味しそうに食べながら柊が突然そんな話をした。


「多分なの?」

テーブルの向かい側で同じようにシチューを食べながら目を丸くした私に、柊はスプーンを口に運びながら頷いた。


「ホントの誕生日はわかんねーし。

拾われたのが年末で、そん時まだ新生児だったらしいから、多分12月生まれなんだよ。」

とんでもなく悲しい事実を柊はあっけらかんと言った。

「『柊』って名前からして冬生まれなのは間違いないだろうけど。」


それは、彼が唯一親から与えられたもの。

たった1つ親からもらったもの。

けれど

「辛気臭い名前だよなあ、『柊』って。木に冬なんて枯れ木みたいじゃん。俺この名前キライなんだ。」

柊はそんな悲しい台詞を事も無げに吐き出す。


< 235 / 324 >

この作品をシェア

pagetop