ふたつの背中を抱きしめた






大勢の人で賑わう病院の、静かな個室で


その男はベッドに横たわる小柄な女性の脇に立って窓の外を見ていた。



「今日はスゴくいい天気だよ、真陽。

こんな日は2人でピクニックにでも行って、真陽の作ったお弁当が食べたいなぁ。」



男は、柔らかな茶色がかった髪を窓から吹く風に揺らしながら、幸せそうに目を細めた。

色々な医療器具を身体中に着けたままベッドに横たわる女性は、男の言葉に眉ひとつ動かすコトなく規則正しい呼吸だけを繰り返していた。


それでも男は気に止めるコトもなく女性に話し掛ける。



「お花見も行きたいよね。

困ったなぁ、真陽が起きてくれないと行きたいトコばっかり溜まっちゃって。」



クスクスと笑いながら、男は眠る女性の手にそっと触れた。



「今日は手が温かいね。いい夢でも見てるのかな。」


その華奢な指には、男の左手に嵌められているのとお揃いの指輪が鈍く光っていた。



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