幸せの刻(とき)
ここ掘れワンワン
ペットショップからの帰り道携帯電話が鳴る。
娘からだ。

「お父さん今どこ
えっ
ダニ除け首輪…
…買ったの。
シャンプーで済むのに…ハーブ
意味判んない。
まあ良いや、今お父さん家に居ないの
庭に繋いでないんだね。私は、保育園寄って病院行くからお父さん帰るの待ってられないから…。色々頼むね。」

ツーツーツー。

私の返事を待たず言いたい事だけ言って切る。
まるで母さんそっくりだ。
要するに、ピースの事頼むと言う事だろう。
…居ない
ピースが居ないのだ。
電話中にリードを放してしまったようだ。慌てて電柱の門を曲がり。
かどを抜けると、隣の老夫婦の手入れされた庭が見える…。
寒椿の赤い花々の下で茶色い犬がちょこっと座って居た。
豆柴
私の記憶が正しければ
あれは娘の買っている
豆柴でピースではないのか
ピースは、勝手に隣の庭に居るみたいだ。
繋いで居たリードが離れて迷い込んだのか。
可能性が高いな。
私は駆け足で隣の庭に向かった。
ピースのリードはやはり離れていた。
私は急いでリードを掴もうと寒椿のそばに駆け寄る。
寒椿のそばに駆け寄ると寒椿の木に隠れていた
老婦人の姿が見えた。
慌てて私は挨拶をする。
「すみません娘のピースが迷い込んで…ご迷惑をおかけして」

言った瞬間、言い間違いに気がつく。
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