涙空



「…送る」

「え、」




ぱっと信号が、赤から青に変わった。なんだかとても安心する。


そんななかで、郁也の声が、耳に静かに届く。

視線を空から降下させれば、なにを考えているのかわからない、郁也の表情がそこにあった。




「…送る」




再度そう言った郁也に、やっと理解する。

私を心配してくれてるんだと。私が郁也に心配をかけさせているんだと。


ふるふると小刻みに震える指先は、まだ隠さなければいけない気がした。


吐き出した言葉で、曖昧な部分を隠すように縫うことにした。



< 140 / 418 >

この作品をシェア

pagetop