涙空
「…送る」
「え、」
ぱっと信号が、赤から青に変わった。なんだかとても安心する。
そんななかで、郁也の声が、耳に静かに届く。
視線を空から降下させれば、なにを考えているのかわからない、郁也の表情がそこにあった。
「…送る」
再度そう言った郁也に、やっと理解する。
私を心配してくれてるんだと。私が郁也に心配をかけさせているんだと。
ふるふると小刻みに震える指先は、まだ隠さなければいけない気がした。
吐き出した言葉で、曖昧な部分を隠すように縫うことにした。