涙空
「…、ごめん。…郁也、ごめん」
「…顔色、悪い」
「…、え」
気付いたときにはもう郁也に異変を感じさせていた。
――――無意識に、謝ってた。
…なんで、こんなに動揺してしまうんだろう。
指先が小さく痙攣を起こす。それを隠すように、背中の後ろに腕を運ぶ。
「…大丈夫。気にしないで」
へらへらへらへら。
笑っていれば、脳裏から掻き消されると思った。
『赤』なんて、要らないんだ。要らない。
早く消えて欲しい。ああそうだ、
視線をゆるゆると上へ上げる。…広がる、オレンジ。
ああ、すこし、落ち着けそうな気がする。