涙空
「いいよ、謝らなくて」
「…でも」
オレンジ色の空の下、私は、俯いて顔を上げられずにいた。
言いたいことを、上手く言葉にすることが出来ない。
…口下手な自分を、この時ばかりは、嫌だと思った。
「…後で、話してくれればそれでいい」
「…、」
カー、鳴き声を響かせた烏が二匹、オレンジ色の空中を泳ぎながら、
すっと頭上を通って、私達を追い抜いた。
「…郁也」
「…転ぶ。よそ見するなよ」
呆れたように声を出すのに、この手は離さない。
ぎゅ、捕まれてない左手を、握り締める。
「…ありがとう」
「…どういたしまして」