涙空



「まだあたし何も言ってないけどね」

「佳奈、嫌なら嫌って言っていいからな」

「…うん」

「佳音黙ってて!あたしが今話してるんだよ!」

「はいはい」




適当にお母さんに返事をすると、お父さんは再度読んでいた新聞紙に目を通し始めた。

仲良いな、相変わらず。思わず笑ってしまいそうになるのを抑えながら、お母さんに視線を戻す。




「お願いって?」




がさがさがさ、静かなリビングに騒がしく新聞紙の音が響く。

――――ちょ、お父さん煩いんだけど。それ煩いんだけど。




「仕事の手伝い、してほしいんだ」

「…はい?」



< 216 / 418 >

この作品をシェア

pagetop