夢でいいから~25歳差の物語
「青山先生っ」


「あ、水橋さん」


息を切らして青山先生を追いかけ、叫ぶと彼はやはり爽やかな笑みを向けてくれた。


心が求めていた。


ずっと欲しがっていたこの微笑み。


「また会えましたね」


わたしはそう言った。


「ええ。今日はお子さんの面談ですか?」


「はい」


「そうでしたか。そういえばよく会いますね、私達」


「ええ」


「これも何かのさだめなのでしょうか」


「…さだめ?」


どうしよう。


そうです、これは運命なんです。


わたし、出逢った時からあなたが好きだったんです。


そう言いたい衝動に駆られる。


「…」


わたし達はお互いに何も言わない。


ただ見つめあっていた。


キーンコーンカーンコーン。


ざわっ。


さらさら。


チャイムと風とそれに揺れる木々の音しか聞こえない。


誰もいない。


2人きりの世界にいるような感覚だった。


「…さだめかもしれませんね」


やがて沈黙を破りたくなったわたしは言った。


しかし、このセリフは嘘ではない。


本当にさだめだったら。


それを考えるだけで胸が躍る。


「ありがとうございます。そう言って頂けて嬉しいです」


青山先生は顔を真っ赤にしながら笑い、踵をかえそうとした。


その時だった。
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