夢でいいから~25歳差の物語
「待って下さい!」


叫んでからわたしは戸惑った。


あれ?


なぜわたしは青山先生を引き止めたの?


彼だって忙しいはずなのに。


「はい?」


当の本人は嫌な顔ひとつしない。


まるで雲ひとつない広大な青空のようだった。


「わたし達が約束していないのに何回も出会う偶然がさだめなら、わたしがあなたを好きになったのもさだめでしょうか」


わー!!


わっわっわっ!


何を言っているの、わたしは。


なんかキザな男の人が言いそうなセリフを言ってしまうなんて恥ずかしすぎて、青山先生の顔を見ることが出来ない。


「水橋さん」


青山先生がわたしの名前を呼ぶ。


「…さだめかもしれませんね」


彼は先ほどのわたしのセリフをそっくり真似した。


ドキッと脈を打つ心臓がその存在をアピールする。


「私もあなたが好きだったんです。最初にお会いした時、なんて美しい方なんだろうと思いました。まるで時間が止まったかのようでした」


「嘘…」


信じられない。


夢なら覚めないで。


「しかし、あなたには大切な家庭がありますよね。私がそれを壊すわけにはいきません」


「わたしは夫と離婚しました。ですから…」


キーンコーンカーンコーン。


またどこかでチャイムが鳴ったようだった。
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