夢でいいから~25歳差の物語
Secret12 哀しみの箱庭
「結婚してくれないか、俺と」


「え!?」


プロポーズされたのは、ホワイトデーだった。


いきなりでびっくりしたけど、もっと先生と一緒にいたい。


1ヶ月に1回しか会えないなんてあまりにも少ない。


毎日テーブル越しに先生を見たい。


そんな気持ちはあった。


「もちろんです。よろしくお願いします」


「本当に俺なんかでいいんだな?お前は未来ある若者だろ?」


そんな年寄りみたいなことを言わなくても。


「先生じゃなきゃ嫌なんです。もっと一緒に過ごしたいんです」


「水橋…」


先生は私の手を握った。


私も握り返す。


この時、私は大学の卒業式を終えたばかりでフリーターの22歳。


先生は47歳になっていた。


式は8月1日に挙げよう、と先生は言ってくれた。


その日は私の誕生日だ。


さて、結婚が決まった後が大忙し。


まずは私の実家に行き、先生にあのセリフを言わせる。


「お義母(かあ)さん…娘さんを私に下さい!」


「あっはっはっはっ」


先生が言い終わったとたん、母は大爆笑した。


「ごめんなさい。でもおかしいわ。わたしの元夫が「お義母さん…娘さんを私に下さい!」だなんて」


私達はただ苦笑する。


「まぁ、不束な娘ですがよろしくお願いしますわ」


交渉成立。


さて、次は…。


いよいよ先生のご両親にご挨拶だ。


それを考えると、心臓が大きく脈打った。
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