恋景色 ~真っ赤な嘘と林檎と誕生日~
帰ろうとするあたしを、真子ちゃんが呼びとめた。
「助けてもらったお礼ってゆーか、冷たいジュースがあるから上がって飲んでってよ」
「そんな気を使わなくてもいいよ」
「上がってよ。あたし、由妃センパイにリンゴの皮むきのお手本も見せてほしいし」
「ヒトにお手本を見せるほどじゃないよ」
「見たい! 見たい! 見たい! あたし、由妃センパイのお手本が見たいんですぅ!」
「…!」
“ひょっとしてこのコ、超わがまま……”
「じゃあ、ちょっとだけだよ」
ノドも乾いてたし、少しだけ真子ちゃんの部屋--つまり301号室に上がらせてもらうことにしたあたし。
「どう?由妃センパイ」
真子ちゃんはジュースを飲み終わったあと、キッチンでリンゴの皮をむいて見せてくれたんだけど、彼女はまず包丁の握り方からして危なっかしくて、見ているコッチのほうが怖くなるような包丁さばき……。
“皮”のほうは名古屋のきし麺みたいにブ厚くて、“実”のほうは北海道みやげの木彫りのクマみたいに凸凹だし……。