【続】私は彼氏がキライです!?



これはアツに対する裏切りになるのかな?



だいぶ人の引いた食堂で、大北さんか買ってくれたコーヒーの表面に浮かぶ小さな泡を見つめていた。



「ごめんな、こんな事して」



「・・・いえ」



「やっぱり顔見るとダメだった・・・。少しでいいから、俺の事、考えてくれないか?」



すごく分かるよ。誰かを好きになると、そんなに簡単に諦める事なんて出来ない。ダメだからって、すぐに気持ちを切り替える事なんて出来ない・・・。



でも・・・



「考えたくても考えられないんです。だってそれはアツと別れる事を意味するものでしょ?そんなの私には考えられません・・・」



アツと別れるなんて、もう二度と嫌。



あんな思いをするのは二度と嫌。



「・・・アツか。彼氏の名前?けっこう・・・キツいな」



頭の後ろを掻きながら顔を歪めて笑う大北さん。



「・・・ごめんなさい」



「謝んなって」



ねぇ・・・どうして?



どうしてこんな悲しいの?



恋ってすごく素敵なものだよね?



なのにどうしてこんなに悲しい気持ちになるの?



「好きになった事も、気持ち伝えた事も俺は後悔してないから。まぁ彼氏の愚痴は聞いてやれないけど、会ったら声くらいかけてよ?」



「でも・・・」



「もう本当に諦めるから。お前の気持ち、ちゃんと分かったから」



優しい笑顔を見せてくれた大北さんは、やっぱり大人だなって思った。



恋をするのに年齢なんて関係ないけど、今後の私が気まずくならない様に、笑ってくれたんだ。



笑顔を返す事すら出来ない私に・・・。



“後悔していない”



その言葉だけが救いだった。




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