幕末オオカミ


「妹……」



つぶやきながら、沖田は上体を起こす。


なんだか、寝ぼけているみたい。目がとろんとしてる。


しっぽが、ふわふわとあたしの足をくすぐる。


ぴんと立っていた耳は、次第に丸くなっていくようだった。



「ど、どいてよ、兄上……」


「んぁ?」



ぺしぺしとその膝を叩くと、沖田は相変わらず寝ぼけた目でこちらを見つめ……。


ハッ!!


突然、何かに気づいたような顔をした。


そして……。




「すすすすすすす、すまねぇぇぇぇっ!!」




ずざざざざざざっ!!



みるみるうちに真っ赤になった沖田は、林の入口まで行ってしまいそうな勢いで、あたしからあとずさった…………。






──これが、あたしの運命を変える夜だった。




そうだったよね、



総司……。




< 109 / 490 >

この作品をシェア

pagetop