幕末オオカミ


土方副長との約束の時間が迫る。



あと、ひとこと……


……言ってくれないよね……


本当は、誰よりアンタにほめられたかったのにな。


バカ沖田。死ね。




「もう、本当に準備しなくちゃならないから」


「あぁ、邪魔したな」


「邪魔邪魔。早く行けよ」


「んだよ、本気で可愛くねぇな」



お前に言われたかないわっ!!


去りゆく沖田の背中に、あたしはベーッと舌を出した。


途端、沖田が振り向く。




「……見た目と口が反比例してるぜ。
せいぜい、見破られないように注意しろよ」






……バタン。


沖田は返事を待たず、蔵の戸を閉めて出ていってしまった。


あとにはマヌケに舌をだした、犬みたいなあたしだけが残された。



だから……。



素直に『可愛いよ』って言えよ!!



無駄に人の心臓を煽るなっ!!



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