情炎の焔~危険な戦国軍師~
-サイド左近-


今夜の友衣さんはいつになく強情だった。


説いてもなだめてもなよ竹のような彼女は自分を曲げない。


「殿の次はあんたまで聞き分けがなくなりましたか」


「そうかもしれません」


それを聞いて深いため息が漏れた。


彼女はただ感情の読めない顔を向けるだけ。


それは友衣さんではない、ただの意固地で冷たい女にしか見えない。


そう感じた時、自分の中の何かが壊れた。


俺は黙って彼女を抱く。


自分でも驚くほど乱暴に。


それでも彼女はやはり何も言わないで押し黙っている。


まるで人形になってしまったかのようで、抵抗さえしない。


そんな小さなことにもいら立ちを覚え、我を忘れて壊れそうな細くて柔らかい体を、獣欲のままに蹂躙した。


心配してくれるのは嬉しい。


しかし、なぜわかってくれないんだ。


俺のつらい気持ちも知らないで…。















ふと月明かりに照らされた友衣さんの寝顔を見ると、一筋だけ涙の流れた跡があった。


彼女の寝顔は何度も見てきたが、こんなに悲しい気持ちになる寝顔は初めてだ。


「友衣さん、乱暴してすみません。しかし」


先程までの感情任せの行為に反し、いたわるように優しく髪を撫でてからそっと抱きしめた。


「わかって下さい。武士である以上、戦を避けられぬこと。そして、俺だってあんたと離れたくないってことも」


その呟きは2人しかいない部屋の空間に吸い込まれて消えていった。
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