情炎の焔~危険な戦国軍師~
第31戦 人知れぬ迷い
翌朝。


-サイド友衣-


「あれ?」


障子越しに降り注ぐ朝日で目が覚める。


気付くと自分の部屋で寝かされていた。


体が切なさで熱い。


左近様との楽しい夢を見たことを覚えているせいか。


夢の中では私達、あの夜の言い争いなんて嘘みたいに仲良くはしゃいでいて、私は何度も左近様の名前を呼んでいた。


「っていうか私、三成様の部屋にいたんじゃなかったっけ?」


どんなに記憶の引き出しを開けて探っても答えは見つからない。


まあ良いか、と思い体を起こすとふわっと淡い香りが漂った。


「この匂い…」


少し前に、私が左近様にあげたお香の匂いだ。


ということは彼がここまで連れてきてくれたってこと?


「左近様の移り香…」


そう思うと体が余計に熱くなる。


もう自分には嘘をつけなかった。


どんなに避けていても、やっぱり好き。


左近様じゃなきゃ嫌。


私にはあの人が必要だ。


離れていたくない。


今すぐ声が聞きたい。


あの笑顔が見たい。


何より、謝りたい。


「左近様っ」


本当の気持ちに気付いた私は身なりを整え、彼の部屋へ早足で向かった。
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