情炎の焔~危険な戦国軍師~
部屋の前まで行くと、もう起きていたらしく人の動く気配がする。


「失礼します」


「どうぞ」


応答があったのでそっと障子を開けた。


「友衣さん…!」


驚く左近様の元に駆け寄り、私は頭を下げる。


「ごめんなさい。私、左近様の気持ちも考えないで戦に行くなって言っちゃいました」


「あの、顔を上げて下さい」


柔らかい声につられて顔を上げると、優しい微笑がそこにあった。


「俺こそ手荒な真似をしてすみませんでした。あんたが心配してくれた上で言っていたこと、わかっていたのに」


「いいんです。私、決めましたから。左近様を信じるって」


「友衣さん…」


「左近様は生きて帰って来てくれるって。だから、私も負けてはいられません」


「やはり戦場に立つつもりなんですね?」


私は頷いた。


ただすべては西軍を勝たせるために。


「ありがとうございます」


急に広い胸に抱き寄せられる。


あのお香の匂いがさらに強くなった。


「俺のことをそこまで想ってくれてるなんて」


「私こそ。絶対に生きて帰りましょうね。三成様の望んだ世のため、そして私達が再び佐和山城に戻って来られるように」


「はい」


その返事を聞き、決意を新たに私は微笑む。


私の気持ちも、左近様の表情も、空もすっきりと晴れ渡っていた。
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