お隣注意報


ガチャ、バタン。

その音が聞こえてから私はそぉっと階段を上がる。

いやだな、なんかいやだ。

自分の家に帰るだけなのにこんなコソコソしなきゃいけないなんて。

うんそうだね、勝手に私がしてるだけだけど!!!

…よりによってなんで私の部屋が端っこにあるのよー。

長原さんの部屋を通りすぎたとき。

がちゃ。
ゴチン。

「てっ!!」

「え?」

またか。

なんでそんなにぶつかんの。

もしかして長原さん、狙ってる?

「すみません…」

「ははっ。前もぶつかってたよね」

笑ってる。おお…天使の微笑み!?

「そうだ、朝に言おうと思ってたこと。」

「はい?」

「あのさ、コレはどういう意味?」

がさ、っと音をたててぶら下がっているコンビニの袋。

「あっごめんなさい!!引っ越しのことで手一杯でそういうの考えてなくて、そこのコンビニで手軽にあわせてしまって…タオル!そう、タオルがなかったんです!!だから一応いろ●すとカロリーメ…」

「落ち着いて工藤さん。なにいってるか分かんない」

「私もなにいってるか分かんない!!!」

「手短にいうよ?…コレ。」

袋の中から出てきた箱。

私がカロリーメイトだと思って買った箱。

「カロリーメイト?」

「どこをどう見たらそうなるかなぁ。」

「え、コレって…」

えっと、コレというのは…

「引っ越しの挨拶にコン●ームなんか貰ったのオレ始めて。」

「私もそんなものあげたの始めて。…ってえええええええ?!?」

うそでしょ?!

いくら切羽詰まってたからってこんなボケかますほど私はユニークじゃないの!!

だからか!!店員さんが私のこと変な目で見てたのは!!

「ごごごごめんなさい!!私そんなつもりじゃ…っ」

「工藤さんて面白いね。じゃあ言いたいことはこれだけだから。」

そういってバタンと扉を閉めた長原さん。

私は立ち尽くすしかなかった。

それ、今日使うの?
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