お隣注意報


一生の不覚。

私、生きててもいいのかなぁ。

男性にあんなものあげてそれも今日使われちゃうなんて。

ばか。どうして気付かなかったの。

恥ずかしさで死ねるよ。

「最悪だ…ショボーン…」

お気に入りになったショボーンのクッションを抱き締める。

今の時刻は10時。

私が帰宅してからなんの音沙汰もない。

といって、女の人が帰った気配もない。

壁に耳をくっつけた私は変態なのだろうか。

「今日、泊まっていっても良い?」

聞こえた。聞こえてしまった。

ウソ、そんなにここの壁薄いの?

そこまで古いアパートじゃないよ。

あぁでも、私が一人で飲んでるときの声、聞こえてたっぽいもんな。

コレから独り言はよそう。

「だめ。」

…?

だめっていったの?

ここまで来て?

もう10時だよ。外暗いよ。

「どうしてよ!!」

「明日大学でしょ。」

「アタシ明日の朝早く起きて帰るから!!」

「そこまでしてオレの家で眠りたいの?」

いやいやいやいやいや。

絶対違うでしょ。

私でも意味わかりますよ。

「一回だけで良いから…抱いて」

「そんなこと言われてもなー。」

なんでそんなに普通なんですか!

ギシ、とベッドのきしむ音が聞こえた。

ここまでよく聞こえちゃって良いの?

会話とか丸聞こえじゃん。

多分長原さんのベッドは私の部屋との壁を挟んですぐそこに置いてあるんだ。

それって、ものすごく困る。


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