笑う門にはオレ様がきた!!
「ばぁっか、でけぇ声出すなって
ったく…。」


と、周りのお客さんたちに
軽く会釈をする師匠。


「す、すいません…だけど、体って私…」


と、小声で今度は言うと


「勘違いするなって
お前の体どうこうしようって
訳じゃないって。
言っとくがお前の貧相な体には
興味ねぇっつーの、ったく。」


ひ、貧相って…
若干、引っ掛かるものの
取り敢えず、安心する。


良かった…違うんだ
でもさ、じゃあどうやって
体で返せばいいのよ。
と首を傾げていると


「オレは無駄に贅沢しろ
とは言わないけれど、
やっぱり良いものを作るには
まず自分自身が良いものを
見分ける目を養わないといけないって
思ってる。」


私は師匠の話に聞き入る。


「だからお前にも
良いものを身につけさせてやって
そして良いものを
ちゃんと見分ける目を持って
仕事をして欲しいと思ってる。
メシにしたってそうだろ?
たまにこうしてプロが作る
旨いもんを食って舌を養うから
それが今度は自分で作るメシに活かされる
と思うんだ……ってオレは
メシは全くつくれねぇけどな。」


そこまで話すと師匠は
ノンアルコールビールを飲み干した。


その横顔は店内の照明のせいなのか
今までで一番輝いて見えた。






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