フクロウの声
「伊東さんに着いていった隊士で藤堂平助という男がいてね。」
沖田は中身の残った椀を膳に戻そうとし、
頼りなげな仕草にマオリはそれを手を出して受け取った。
「江戸の道場にいた頃からの仲間なんだ。
まっすぐな男でね、
からかうとすぐムキになるところがおもしろくて、
剣の腕はなかなかでね、
からかい半分で始まった喧嘩も真剣だったよ。」
ぽつぽつと話す沖田を、マオリは黙って見守っていた。
「斬るのですか。」
マオリは沖田にたずねた。
沖田はその問いを転がすように、
伸びた爪を指をこすりあわせて触っていた。
「そうなるかもしれないね。」
「昔からの友だというのに、随分あっさりと言うんですね。」
どこか、他人ごとのように答えた沖田にマオリは言った。
「できれば斬りたくないなあと、思ってるんだけどなあ。」
マオリはますますこの沖田という男が不思議でならなかった。
沖田は中身の残った椀を膳に戻そうとし、
頼りなげな仕草にマオリはそれを手を出して受け取った。
「江戸の道場にいた頃からの仲間なんだ。
まっすぐな男でね、
からかうとすぐムキになるところがおもしろくて、
剣の腕はなかなかでね、
からかい半分で始まった喧嘩も真剣だったよ。」
ぽつぽつと話す沖田を、マオリは黙って見守っていた。
「斬るのですか。」
マオリは沖田にたずねた。
沖田はその問いを転がすように、
伸びた爪を指をこすりあわせて触っていた。
「そうなるかもしれないね。」
「昔からの友だというのに、随分あっさりと言うんですね。」
どこか、他人ごとのように答えた沖田にマオリは言った。
「できれば斬りたくないなあと、思ってるんだけどなあ。」
マオリはますますこの沖田という男が不思議でならなかった。