フクロウの声
四、沖田総司
その夜も、マオリはいつものように仕事を終えた。

 
標的となった男たちは、
マオリと刀を交えることもないままに息絶えた。

マオリは暗闇から突如飛び出しては、
相手が刀を抜く前に心臓を貫いた。
 
刀を抜くと血が吹き出すので、
マオリは素早く体を離した。

刀を振って血を飛ばすと、懐紙でぬぐって鞘におさめた。
 
後ろで手をたたく音がして、マオリはさっと身がまえた。

「いやあ、すごいなあ、噂どおりだ。」

いつのまにか暗闇にやせた男が立っている。

物陰から男が出てくる。
背がひょろりと高く、月代が青々と美しい。
艶のない髪が垂れている。
 
マオリは男の気配に気がつかなかったことに驚いた。

おれを宿してからは
五感が並みの人間よりも数段鋭くなっているというのに。
 
鞘におさめた刀を再び抜いて、マオリは男の襲撃にそなえた。

「土方さんがあまりに褒めるものだから、
 私も君に会ってみたいと思ったんだよ。」
 
男は刀を抜いて今にも飛びかかってきそうなマオリに、
薄く微笑みかけた。

男の口から土方の名が出て、
ふと警戒していたマオリの肩から力が抜けた。

「誰だ。」
 
マオリはそれでも用心深く、男に問いかけた。

「私は新撰組の沖田。一番隊組長の沖田総司。」
 
沖田と名乗った男は答えた。
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