恋猫
 

 ヒョイ。


 美化が尻を咄嗟に俊敏に動かし、虎の欲望をかわした。


 「見損なわないで」
 「私は品の悪い野良なんかに興味はないわ」


 美化は何も無かったように、その場を凛々しく立ち去った。
 実際、美化はオス猫たちには興味がなかった。


 血統のいい美男猫であろうと、野性味溢れた野良猫の番長であろうと、全くと言っていいほど、美化は興味が無かった。


 興味があるのは、オスではなく、気高く知性豊かな男、人間の男だった。
 楓家のひとり息子 淳ノ介さまだった。







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