恋猫

 美化はこう考えて、早速、淳ノ介に接近した。ところが、ところがである。淳ノ介の態度が可笑しい。妙によそよそしくなったのだ。


 美化が淳ノ介のそばに行くと、以前ならすぐ抱き上げて好き好きしてくれたのが、何と向こうに行け、と手で追い払う始末。それどころが、何か嫌なものでも見る目付き。


 「いったい、どうなってしまったの」


 淳ノ介が、猫か、獣を抱いた事に嫌悪感を抱いている事なぞ、つゆ知らず。
 美化は、事態の大変化に驚くばかりであった。


 淳ノ介の変化も、時が経つにつれ、美化を可愛がる元の状態に戻って行った。


 「時こそ最良の医師」
 「時よ今夜もありがとう」


 美化は、ただただ時に感謝をする日々を過ごしていた。
 こうして時が、ゆるやかに、ゆるやかに、流れて行った。






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