ヴァージニティー
夕子が大学を卒業と同時に親元を離れて、今年で3年目。

朝人は高校を卒業してから建築会社で働き始めたので、今年で5年目になる。

「夕子」

朝人が自分の名前を呼んだので、
「何?」

夕子は聞いた。

朝人がテーブルのうえにマグカップを置くと、
「今日は早く帰れる?」
と、聞いてきた。

そう聞いた彼が主人の帰りを待つ犬みたいでかわいくて、夕子はクスッと笑った。

「もちろん、帰れるよ。

急に予定が入ってもちゃんと帰るから」

夕子は答えた。

「あっちゃんは?」

そんな風に呼んだ夕子を、残酷だと朝人は思った。
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