いつか見る青
すごく優しく接している感じがするんだよね。


ぶっきらぼうに見えるけど、きっと悪い人ではないんだな。


「……何見てんだよ」


当然のごとく、紫さんは私のぶしつけな視線に気づいたようで、私の目の前で足を止めると、不機嫌そうに言葉を吐き捨てた。


「あ、す、すみません。えと、おはようございます…」


その距離で私の声が聞こえていない筈はないけど、紫さんはしばらく冷ややかな視線を向けてから、結局無言のまま、その場から足早に去って行った。


……紫さんだって、きっと色々と複雑だよね。


4歳で最愛のお兄さんと死別する羽目になったんだから。


その年齢ならもう、大人達の間に漂う不穏な空気を充分に感じ取れていただろうし。


幼少時代の嫌な記憶に繋がるお母ちゃんと、その娘である私を、簡単に受け入れてくれる訳がないもん。


急いじゃいけないよね。


紫さんが許してくれるまで、静かに待つ事にしよう。


私は自分自身にそう言い聞かせながら、ゆっくりと階段を昇り、自室へと向かったのだった。
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