××倶楽部

「でもさ……アキ兄、こっちは大丈夫だけど、雫さんのほうは大丈夫なのかよ? 俺たちより若く見えっけど」


 そ、そうだよ。私はなんとか体制を立て直す。典ナイス。こっちサイドで平静保ててるのは典だけだ。だから、お兄ちゃんは典を呼んだんだ。

 すると今度は雫さんが涙声で話はじめた。


「…………本当にごめんなさい。私、両親の顔も知らないんです。施設で育ちました。年もこう見えて、アキさんと同じ年です。

 なので、この子のこともアキさんに迷惑かけるくらいなら……諦めようと思ってます」


 お兄ちゃんと同じ年? うそ、やだ……高校生かと思った。

 お兄ちゃんは、憤慨したように自分の膝をパシンと叩くと「雫っ!」と普段のお兄ちゃんからは想像できないくらい太い声をだした。


「その話、何回もしたと思うぞ。うちの母さんや芽依はそんなこと気にしない。俺がいいと言ったらそれでいいんだ!」


「お兄ちゃん……」


 びっくりしすぎて、頭がくらくらする。


 典に抱きかかえられていたお母さんが、ありがとう典くん、と言って座りなおす。


「はあ、びっくりしたわ。お兄ちゃんは、絶対結婚なんて興味ないと思ってたから……でも、雫さん、あなたはお腹の子をどうしたいの?」


 雫さんは涙をポロポロと流した。本当、アニメに出てくる女の子みたいに可愛い。大きな瞳に長い睫に涙をためる。

 お兄ちゃんがそっと優しくハンカチを手渡す。


 お兄ちゃん……意外とやるじゃん。

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