××倶楽部

 典と顔を見合わせて、私たちはお兄ちゃんが何を言い出すか次の言葉を待つ。


 お母さんは、トレイに人数分のオレンジジュースを用意して、「お兄ちゃん言ってくれたらケーキ買ってきたのに」とその場を盛り上げようとしたのか明るい声を出した。



「母さん、芽依、典」


 お兄ちゃんの声に、お母さんも私の隣に座った。


「どうしたのよ、お兄ちゃん。何かしら?」   


 なんだろう……こんな高校生みたいな子連れて何か変なこと言い出したらどうしよう。というかお兄ちゃんがかしこまって私たちにこんな風に話すのが初めてだ。

 緊張している周囲をよそにお兄ちゃんは飄々とした口調でさらりと言った。



「俺、結婚する」



 け、け、け、結婚っ!?


 年齢イコール彼女いない歴のはずのお兄ちゃんが、結婚!?


 ドッキリ番組とかじゃないよね?


 お兄ちゃんが結婚とかない! 絶対にない!! 



「実は、雫さんのお腹の中には俺の子がいる……」


 雫さんは、顔を真っ赤にさせて俯いた。


 こ、子? て、赤ちゃんが??




 め、目眩が…………



 お母さんがクラっと倒れて典が慌てて抱きかかえる。


「おい、芽依は倒れんな!」


 典に背中を足蹴りされて、なんとか意識を保つけど。お兄ちゃん、二次元の女の子しか興味なかったのに、三次元の女の子とそういうことしちゃってたってことなの?


 信じられない。お兄ちゃんが私の知らないお兄ちゃんになっちゃった。

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