××倶楽部
「あいつって社長のこと?」
手を後ろでついて、ぼんやりと庭を眺めてる典の隣に座る。
典がぼんやりするなんて珍しい。
私と違ってお酒にも強いし、あまり酔ったりはしないんだけどね。
「いい奴すぎて、ムカつくよ。この短期間で芽依が惚れたのも納得、マーベラスを辞めなかったのも納得」
「そうでしょう? マーベラスってなんかいいんだよねー。SM倶楽部なのにさ。典がわかってくれて嬉しい」
「だけどさ……」
「典……っ!?」
目の前が真っ暗になったのは、典に抱き締められたから……
「芽依は、渡したくない。あいつと別れて俺のものになって」
とくんとくん、と典の胸の鼓動が聞こえる。
「あいつは、芽依じゃなくたって大丈夫なはずだ。だけど、俺は芽依じゃなきゃ駄目だ」
嬉しくないはずなんてない。典…………それ、もっとはやく聞きたかったよ。
社長と出会う前に…………
「僕も……芽依じゃなきゃ駄目だと言ったら?」
「社長っ?」
うわ、マズい!
こんなところ社長に見られるなんて!
慌てて典から離れようとするけど、典の両腕はきつく私の体を拘束する。