ゆきんこ
それから……



5分。




「さっみーな。福嶋、カイロ持ってね?」



「……ごめん、持ってないや。…ってか、手袋しないからだよ。」



よく見ると。



新野の手は、指先まで真っ赤!




「いつも歩いてるから、かえってつけてると暑いし…。」



「なるほど…、でも、前もそんなこと言ってなかった?」



友達に、カイロ貰おうとしてた。




「……。そうだっけ?」



おっと……、


イケナイ。

あれは私の盗み聞きだった!




「…えと…、手袋、貸そうか?」



「え。いいよ、それじゃ福嶋が寒いっしょ。」



「…ううん。ホラっ。」



私は手袋を取って。


それからその手を……



新野の頬に、ピタリとくっつける。



「うお、あったけ~…。」



「でしょ。新野の言う通り、歩いてると手が熱くなる。だから……、クールダウン。」



外した手袋を、新野に差し出す。



「……じゃあ…、ちょっとだけ。」






新野の手にはめられた手袋は……、


ほんのちょっぴり窮屈そう。



でもでも……



何コレ。




かなり……




喉の奥がぎゅうっとなる。






それからしばらくして……




すぐにバスが到着した。




「ハイ。ありがとう、助かった。」




新野はそう言って手袋を返すと……



私の背中を、軽く押した。



『先に乗れ』ってことかな。




私は先に乗り込んで…、



いつもの二人掛けの席に、腰をおろした。




………と、




「朝の方が混んでんな。」



ドカッとすぐ隣りに……



新野が座ってしまった!



どうしたものかと慌てる私に……



「大丈夫。野間が来たら、違うトコ行くし。」




見透かすように、ひと言。



「わっかりやすいよなあ。リアクションですぐわかる。」


ハイ。そりゃあ、リアクション女王ですから。



「今日は?絵、描かないの?」



「………!」



なんと……!


そこまでバレてた?!



「…描かないなら俺描こ。…………」



ぉおお~!?



密着度……アップ!!




新野は呑気にハナ歌なんて歌っているけど……



それどころじゃないよ~!



「…できた!ドラ〇もん!」



「………。うまっ。」




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