君という海に溺れる




ガサガサ


とある日のとある夜。


眠れない身体を口実に、私は自分の部屋の押し入れを漁っていた。

探しているのは、かつて受け取った"卒業アルバム"というやつである。




「あ…これかな?」




押し入れの奥深くから引っ張り出したそれ。

予想通り埃を被っているその表紙を見るのは実に数年ぶりだった。

中身に至っては卒業してからまだ一度も見ていない。

開くことすら嫌だと思っていたあの頃。

目の届かないところに行けと、奥へ奥へとしまい込んだ。


忘れていた存在。
忘れたかった存在。


もう一生見ることはないと思っていたのだけれど。




(まさか自分で引っ張り出す日が来るなんて)




人間、わからないものである。




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