君という海に溺れる




そう首を傾げる彼女は誰よりも幸せそうで。

まるでこの世の幸せを独り占めしたような顔をしている。


屈託のないその笑みが。

大好きだと紡いでくれるその声が。

全部全部、大切なんだ。




「もちろん、幸せだよ。世界で一番」




だから、君に負けないくらいの笑みで答えよう。

その笑顔が絶えず続くように。


そんな午後が何より幸せだった。何気ない時間が宝物だった。




「そうだ。新しく作った歌があるよ」


「あたらしいおうた?」


「そう。新しいお歌」




君のために作ったんだ。

そう言って奏でた音をどうか忘れないでほしいと願う。

君のために作った音色だから、どうか大切だと知っていて。


俺の想いがこの歌にのっていつまでも届くように。




< 252 / 296 >

この作品をシェア

pagetop