君という海に溺れる




この時の俺は、もう既に自覚し始めていた。

この小さな女の子に対する小さな独占欲を。

あの笑顔への依存を。




(…ちょっと、やばい?)




けれど、それは恋とかそういうものではないのだ。

下心のようなものがあるわけじゃないし、ましてやこんな幼い子どもとどうこうしたいという欲求もない。

そこまで女に飢えてもいない。


ただ、あの笑顔を守ってやりたいという小さな括りのない想い。

理由のいらない感情。

無条件の、愛情。


もしかしたら、恋よりも厄介な感情かもしれないけれど。

でも深い想いではあると思う。


俺は彼女に救われたあの日から、彼女という海の中に生きているんだ。






まるで溺れるように。
(それは息の出来る心地好さ)




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