君という海に溺れる
「めんどくさ…」
溜息混じりに出たのは最近口癖になっているんじゃないかと思う言葉。
いい言葉でないことは重々承知しているがどうも口から出てしまって。
そんな自分にもう一つ溜息を吐いた。
女の子がそうそう口にしていい言葉ではない。
ザワザワ、ザワザワ
それはほんの少しの囁き。
それでも耳からはいってくる知らない人たちの話し声は雑音にしか聞こえず、ぎゅっと耳の奥へ押し込んだイヤホンに意識を集中させる。
違う世界へと逃げるように。
せめてもの救いは、今いるこの場所が満員電車ではないことだろうか。
電車に乗るのはもともと苦手だ。
満員電車など気が遠くなる。
けれど、学校の帰りほど、この空気を嫌だと思うことはない。
何故疲れた体を更に疲れさせなくてはならないのだろう。