Love♡LDK Ⅱ

スーパースター

"実は多彩な才能を秘めたSuperStar"


見出しはこうだ。


"いつからか、彼らをテレビで見かけなくなった。
レギュラー番組は打ち切り、CMは契約切れ。 みるみるうちに彼らのファンは減っていき、気づけば5人は姿を消した。

8年半も昔の話。"みんなを輝かせたい"。そう言ったあの7月7日、彼らは産まれた。
最年長は中学2年生、最年少は小学6年生。 平均年齢が12.8歳というのは当時の私たちに衝撃を与えた。
彼らの才能には目を見張るものがあった。 5人とも歌わせれば上手いし、踊らせれば息の合ったそれを披露する。
ただ、それだけだったのだ。

時は"アイドル戦国時代"。
2年連続SunshineDOME TOKYOでコンサートを開催したRainbowを筆頭に、Wild Wind、Honey Girl、柏原真菜、・・・・・・。 挙げればキリがないほどに、新しいアイドルが産まれた。
新しいアイドル時代の幕開けだった。 演技、トーク、何かしら秀でたものがなければ遅れを取る。 もはやアイドルの枠を超えたアイドル生存競争。
そして彼らは出遅れたのだ。 トップアイドルとまで囁かれていた彼らの輝きはいつしか、後輩たちの影に隠れてしまっていた。

ーーーそして、現在。
5人は、ステージに帰ってくる。
自分たちの"輝き"を磨いて。

最年長、高城愛地。 彼はキレキャラと見せかけて実はお茶目なのだ。 レギュラー番組を1人で受け持ってから気づいたことだ。 赤坂太陽とコンビじゃないと、と思うファンが多かったがそんなことはなかった。 甘いマスクから繰り出される甘酸っぱい言葉にはにかみ笑顔。そして妖艶な演技。 新しい一面に古くからのファンはときめき、 お茶の間のおばちゃんたちを虜にする。 最も昼ドラが似合う男。 彼の輝きは昼にこそ本領を発揮するのだ。

最年少、赤坂太陽。 これはもう名が体を表している。 彼のトーク術は群を抜いていた。 喋らせたら笑いしか起きない。 そしてさりげなくメンバーをたてるのだ。 実は赤坂は関西出身。 両親は関東出身のため標準語が自然と身についたが、それと同じように、彼はお笑いによって"笑いの感覚"とトーク術を取得した。 グループ名と正反対な名前も、4人を輝かせるための重要なファクター。 彼は産まれた瞬間から才能を持っていたのだ。

クールガイ、黒澤蛍。 4人の影に隠れているかと思いきや、そこはさすが自分で光り輝く"蛍"である、彼は最も意外な才能を発掘したのだ。 大ヒットを記録したアニメ映画「空飛ぶカーペット」での演技が声優ファンの間で話題になり、アニメ界の巨匠の目に止まる。 現在黒澤は深夜枠に1本、子ども向けに1本出演している。 元々"イケボ"と称されていた彼。 "声での芝居"という才能は、黒澤自身が輝こうとして発見した新たな道である。

王子様、流川隼斗。 俳優としての仕事が多いイメージだが、実は主演を努めたことがあまりない。 その訳は、俳優を本業としている人たちと比べて演技が平凡だったから。 それがある役をきっかけに変わる。 従兄弟・如月湊との共演で話題を呼んだ月9、彼が演じたのは内気な高校生。 彼の名は1時間だけ"水瀬公平"に変わる。 彼の演技は"成りきる"のではなくもはや"憑依"の境地に達した。 一体何が流川の演技を変えたのか。

リーダー、和泉准。 恐らくSuperStar復活において1番苦労したのは彼だろう。 自分に仕事が来なくて苦悩する。 そうして彼が見つけた道はやはり"アイドル"だった。 歌とダンスを磨いて自費でライブを開催。 積極的に各地を回りファンと交流。 和泉の温和だが男らしい性格、繊細な歌詞とダンスが、新しいファンを呼び込むことに成功する。 一芸には秀でなかったが、メンバーのアイドルへの帰り道を作ったのは間違いなくリーダーの和泉だ。

沈黙の時期、5人はもがき続けた。 もう一度、ステージに立ちたいと願って。
そしてその願いは、近い将来、実現するだろう。
もう彼らは人々を照らすだけの星ではない。
自らをも輝かす星となったのだ。

SuperStar復活伝説は、きっとこれからも続く。"


雑誌を閉じて、表紙を一撫でする。

満面の笑みを浮かべた5人が、そこにいた。

いとおしさが込み上げてきて、涙が出そうだ。

なんとか堪えて、窓の外を見る。

眩しい光、真っ青な空、自分より下にある雲。


離れてもずっと、応援してるよ。

窓辺にもたれた女性ーーー桜井満奈は、雑誌を抱きしめて笑った。
< 634 / 680 >

この作品をシェア

pagetop