この声が枯れるまで
ん……?俺は、何か声のような、小さな音が聞こえたので、振り向いた。そこには……一人の女の子がたっていた。……って、あれ????この人、同じクラスの長尾じゃん。


「あ、隼人って、ギター弾くの?」


彼女の名前は、長尾羽流(ナガオハル)。たぶん男子ウケは、この学年では一番いいと思う

よく、同じ学年の奴らと遊ぶと「俺…長尾のことすきなんだよな~」とか言ってくる奴が、今までに何人もいた。……いや、俺にそんなこと言わないで、長尾に言えよ、って思うんだけど……


「おう!ギター弾くんだ。学校に内緒で持ってきてる。」


「そうなんだー!んじゃ、今弾いてた奴、聞きたい!!!」


いや……この曲は、今まで練習してきた曲の中でも、まだまだ練習してない曲。でも、長尾は目を輝かせながら、俺の方を見つめた。ちょっと茶色い瞳。ぱっちり二重で、裏表の無い、この笑顔。俺も一瞬だけど、どきっとした。もてる奴は、オーラがちがうって、このことを言うのだろうか。俺は、そして、どうしたらいいんだろうか!!!



「えーーーっと。」


完敗だ。長尾の瞳には、負ける。まだ一度もその瞳に逆らったことは無い。


「んじゃ、一曲」


ポロン……。


俺は、いつものように、大好きなギターを、そして、大好きな兄の曲を、精一杯演奏した。もう、5時間目が始まる、チャイムがなって、俺は、ちょうど最後まで演奏し終わった。

「~~っまだまだなんだけど、練習頑張ってんだ。」


やっべーーー!!!!俺絶対顔赤い!!!!顔が燃えるように熱い。俺は、瞬間的にしたを向いた。


その時……



「ん……ぁあ…長尾?」


長尾は、大粒の涙を流したんだ。俺の目の前で、必死にその涙をこらえようとしているようだったけど、あふれる涙はとまらなかった。



「~~っごめん!!俺、めちゃくちゃ下手で。あの、泣かれるなんて……」


「っっちがう!!!!!ちがうよ隼人。」

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