溺れる唇
特に予定の無い火曜日の夜。
あと少し残業が長引いたとしても
待っていたのに、と怒る人もいない。
普段は特に感じないことだったが、
こんな時、イイ年をして、
言い訳にできる存在のいないことが
悲しかった。
まあ、そんな存在がいたとしても
自分がそう言って帰る姿なんて
想像できないんだれど。
私は中途半端に仕事熱心な自分に
ちょっとだけ重い溜め息をついて、
下ろしたばかりの受話器を取り上げた。