溺れる唇

私は、うっと言葉に詰まり、仕方なく、
他の人と同じ呼び名を口にした。

「・・・笠井、さん」
「うん」

笠井さんが、よし、という感じで微笑んで、
私を見下ろす。



不自然に近い、顔と顔。



「あの、本当にすみません」

キスしそうなくらいの距離で謝ると、
笠井さんは微笑みを苦笑に変えて、また、
ぐい、と私の頭を自分の肩に押しつけた。

「わかったわかった」



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